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海へ行く確率50%、会社に行く確率50%

 朝起きて寝床ですぐすることは、イヤホンを耳の穴にぎゅうっと押し込むことだった。
 ・・・・。
 二曲ぐらい聴いてからむくりと起きる。食欲なんてあるわけがない。
 自分の怒りを検証していると、どうも海に行きたくなった。
 どの辺に行こうか。

 会社へと向かうのだろう、急ぎ足で階段を上ってくる人の波に逆行して自分は階段を軽々と下る。
 頭の中ではずっと音楽がぐるぐる回っている。
 
 誰かの態度に対する怒り、よさそうに思えた人の自分に対する態度、いくら言っても聞いてくれない連中、・・・・怒りはどれも、自分が不当に扱われていると思いこむ、被害妄想。
 
 怒りは、外向きだ。
 外に対しての怒りだ。・・・・やっぱり。
 自分は外に、左右されてる。人の態度に左右されてる。
 どうにもならない他人の気持ちに自分の気持ちを丸投げしてる。
 自分の気持ちの責任を放棄してる。
 薬をもらいに行こうか。
 落ち着くかもしれない。
 いや、駄目だ。
 こういう時こそ、踏ん張らないと。
 外に頼り過ぎる。外は自分をどうにもしてくれない。
 せいぜい心に絆創膏を貼ってくれるだけ。
 
 間を開けて座る人々を乗せて、眠たい電車がついた先は、陽のよく当たるコンクリートのホーム。
 駅を出てうねる坂道を下り、上り、海を目指す。
 平日の小さな漁港。町の人々はすでに大方の仕事を終えている、遅い朝。
 新緑が湿っている。
 汗ばんできたころに、背の高いヤシの木が見えてきた。
 駐車場にはおそらくだいぶ前から止められているのだろう軽トラックが一台。
 レストハウスはまだ開いていない。
 建物の脇を通って、小さな展望台へ行く。ざらざらしたコンクリートで形作られた丸太デザインの欄干にもたれて、遠くに目をやる。

 それから、急な階段を下って、海の近くへ。
 ごつごつした、大きな岩、小さな岩。岩と岩の間にたまった海水。
 太陽の光で煌く水面。あたたかい風を頬に感じる。
 緑の苔で滑らないように岩の上をつたっていく。
 
 ひとりでも、幸せな感じ。
 誰かに左右されない、自分が感じること・・・。

 大きく息を吸い込み、吐いて、目を見開く。
 ドアを開ける。
 まだ頭の中で音楽が回っている。

 イメージの中での列車の旅を終え、パソコンの電源を入れた。
 なんてこった。
 どうにもならないと思っていた気持ちはすでに、消えていた。
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テーマ: ショートショート | ジャンル: 小説・文学
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