ある朝。そして夜。

何日かぶりに電車に乗る。
至近距離にいる人たち。
息苦しい。
いつも開く本。
今日は取り出す気になれない。
車窓を眺める。
通り過ぎていくホーム。
線路。
焦点が反対側の、走り去る線路に合う。
何だか眩暈がして、目をそらそうとするのに
また、目が吸いつけられてしまう。
自分がふらついたのか、
電車が揺れたのか、
ドアに体が軽く当たった。
慌てて、ドアに張り付くようにもたれる。

階段を上がっても、もう足は痛くない。
けれども駆け上がることもない。

数日間、ゆっくり過ごしただけで、
自分のペースが随分落ちたことに気がつく。



帰りに駅の近くのパン屋に寄った。
店内にかかっていた音楽が耳に入ってくる。

シンディ・ローパーのタイム・アフター・タイム。
久しぶりに聞きたくなった。
そう思いながら、お釣りをぼんやりと受け取り、
家に向かう。

家に入るなり、カセットを仕舞った大きな引き出しを
引っ張り出す。
確か、・・・
あれ?!・・・なんでないの?
空き巣のように引き出しの中を探す。

きっと、あいつだ。。。
あのやろ~・・・・。
また勝手にどこかへ持ち出したな・・・!

仕方ないので、違うものを聞くことにする。
奥のほうにあったカセット。
As good as it gets
・・・?・・・サントラのはずだけど、どんなのだったかな?

スピーカーから流れてきた音は、
美しいピアノとオーボエ・・・

一瞬、挙動不審になる。
なぜか、一人慌てる。


今聞きたかったのは、シンディの切ない歌声、
もしくは元気なメッセージ。

それなのに!

クラシックも聞く。
けれども、それを聞くときの精神状態のようなものがある。
ストレスフルな時に、クラシックを聞いて、
心穏やかにしようというタイプではない。
逆に動揺する。

玄関の方に逆戻り。
通り道のようなキッチンに戻り、
作ってあったお茶をグラスに注ぎ、
一気に飲む。
それからやかんに水をいれ、火にかける。
小さなポットを棚から出し、蓋を外す。
紅茶の缶を開け、スプーンひとつ。
お湯が沸くのを待つ。
その間、ずっとそわそわ。

部屋の奥のほうから聞こえてくる音楽が、
どのように展開していくのか、
キッチンの隅にある椅子に座って
耳を澄ます。

沸騰した水の音。
やかんと一緒に大きなため息をつき、
やっと落ち着く。



電話の音。
誰だろ?
「もしもし?」
「あ、Sちゃん?俺だけど。」
おれ?俺だって?(閉口)
俺様かい?!
この男は、いつもそう。
自分の名前を言わない。
そのどっちが苗字でどっちが名前か分からないような名前の
どちらか一方でも名乗れよ!

・・・と言いたいところだが、奴に悪気がないのは分かっているので
黙って聞く。
「今日さ、実家に行ってさ~」
「あの、玄関の広さが半端じゃないっていう?」
「そう。親が「もう死ぬ」って言うから行ったんだけどさ、
そしたら「死ぬのやめた」だって。」
「・・・なにそれ?・・・あ、ごめん。。。」
どうせ奴は聞いてない。一方的にしゃべってる。
「でさ~、家の庭にあった唐辛子引っこ抜いてきたから」
・・・と、唐辛子・・。。。。
この前は梨一個だった。。。
「もう寝てる?」
時計を見る。まだ九時過ぎ。
「え~と、うん。」
寝てるわけがない。
でも、キッチンの電気以外は消していた。
・・・まさか、近くにいるんじゃ!?
「ドアのところに引っ掛けておくよ。」
「あ、うん。ありがと。」
これからシャワー浴びたかったんだけどな。
寝てるって言って、浴室の電気つけるのもな~。
まぁいいか。。。
奴はきっと明日も電話かけてくるだろう。
唐辛子の感想を聞くために(苦笑)。
でも、ま、ありがとう(笑)。

あ~疲れた。。。
スポンサーサイト
テーマ: * 詩的Diary * | ジャンル: 小説・文学
キザで、優しい、、、か。 | Home | 残り時間はあとわずか。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する